『赤毛組合』‐「シャーロック・ホームズの冒険」を読んでみた。【全体のあらすじと考察】

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赤毛組合(The Red-headed League)

※他の邦訳として「赤毛連合」、「赤髪組合」など。

 

 「シャーロックホームズの冒険」に収録された短編の2番目の作品です。

 この作品はミステリ界でも最高傑作との誉れも高い名作で、私も一番好きな話です。

 というわけで、全体のあらすじをざっと紹介。感想はあらすじの下です。

 

あらすじ

 燃えるような赤毛をした男が、「赤毛組合」なる団体の奇妙な話を持ち込んだ。

 三か月前、彼は素晴らしい赤毛の人間にのみ大英百科事典を写すだけの仕事を与えて破格の報酬を出す、という彼にぴったりな話を自分の店の従業員から聞いたらしい。

 彼は早速応募に行き、大勢の応募者の中から見事採用され、その後すぐに働きはじめてきちんと給料も貰った。

 しかし今朝仕事場に行ってみると、赤毛組合は解散したという告知板があって、テナントの大家などに聞くとそんな団体は知らないというのだ。


 調査に乗り出したホームズは依頼人の商店にいき、道の前の道路をコツコツ叩いたり、平常の半分の給料で働く写真好きというらしい彼の従業員に道を聞いたり、周りの地理を確かめるなどの調査をした。

 この調査で確信を得たホームズはワトスンとコンサートに行き、時が来るまで音楽を楽しんだ。


 そしてその晩、ホームズはジョーンズ警部と銀行の取締役を呼び、強盗が来ることを予期して銀行の地下で待ち伏せる。

 やがて地下から忍び込んできた強盗を見事捕らえたホームズは、これらの種明かしして見せた。

 

 無意味な仕事は依頼人を店から出して外に拘束するためなのは明らかであること、

 従業員が写真の現像と称して地下によく行ったのはトンネルを掘るためで、

 銀行の裏に店があったことは地下から侵入するにはうってつけであり、

 赤毛組合の唐突な解散はもうトンネルを掘り進める必要がなくなったからだったのだ。

 

名作のゆえん


 読者が謎解きに挑戦するにはやや無茶が過ぎるホームズシリーズのなかで、この作品は材料が揃っていて一応謎解きする土台はある上に、珍妙赤毛組合なる団体から始まって銀行強盗に終わる意外な展開はなるほど代表作に相応しい面白さ


 冒頭も秀逸で、ワトスンとホームズの喧嘩みたいな言葉の応酬がとても面白いです。実は事件に興味津々だけどそれを誤魔化してるワトスンと、皮肉満々にそんなワトスンを揶揄するホームズ。

 所詮人間の妄想など限られていて、事実は小説よりも奇なりなんだとワトスンに認めさせてやる!

という意志をホームズが固めた所で応酬は終わりますが、これはワトスンの粘り勝ちなのではと思わなくもない。

 

 しかし話の構成が念入りに練られている一方で、相変わらず書き間違い?があるようです。

 強盗を捕まえるお手伝いとしてピーター・ジョーンズ警部が登場するのですが、前の作品である「四つの署名」では、アセルニー・ジョーンズという名前で出ています。

 うーん、ミドルネーム、とかかな……?(苦しい)

 

どうなの?ホームズ

 

『“He is, in my judgment, the fourth smartest man in London, and for daring I am not sure that he has not a claim to be third. I have known something of him before.”』

――彼の賢さはロンドンで四番目、大胆さにかけては三番目だと彼は主張するかもしれないな。

 ホームズが依頼人の従業員、つまり銀行強盗と話した後に言ったセリフ。

 ヤツはすごい、と言いたいのは分かりますが何とも微妙な順位・・・(四番と三番て)。

 まず間違いなくホームズは自分が一番だと思ってるでしょうが、それ以外は誰なのでしょうね。

 前作「ボヘミアの醜聞」に登場したアドラーや、後にホームズの宿敵となるモリアーティ教授(彼の登場はまだ先の作品だが、この時点では既にホームズはモリアーティの存在を知っているはず)なんかが当てはまりそうではあります。

 

おいおい、ワトスン


 この話ではホームズの二面性もまたありありと描かれていて、コンサートでゆったり音楽を楽しむ繊細な姿が描かれる一方、その晩には生か死かの銀行強盗との対決に臨む毅然たる姿が見れます。

 これが一人の人間の精神に詰まっているというのがつくづく不思議だとワトスンは感心します。


 しかしワトスンよ、仕事をほうっておいてホームズとコンサートになんか行っちゃっていいのか。

“I have nothing to do to-day. My practice is never very absorbing.”

――(コンサートに行かないかホームズに尋ねられて)今日はすることはないよ。医者もそう面白いものでもないし。

 こんなこと言っちゃって、医者の仕事がしっかりうまくいってるのか思わず不安になっちゃう(オカン感)。
 それと描写をみるに、ワトスンってばコンサート観劇中にホームズのことを割と見てるようだ。

 その日のコンサートにあまり興味が持てなかったのか、事件が気になって集中できないのか、それともホームズの切り替えように感心しているのか。

  どれにしたって仕事をさぼって行くならちゃんと見なさいよ! もう!(オカン感)

 

赤毛組合の考察

 

 とにかく全体の感想としては、やっぱり面白いの一言に尽きます。

 初見で読んだ時には、確かにその考え方をしていればホームズみたいに強盗を予知できたはずだったのに!と思わせられました。

 ホームズとワトスンの掛け合いも愉快だし、一番好きな話です。

 

 考察もいろいろな人がしているみたいですね。

 とあるシャーロキアンの方が実験をして、トンネルが掘られている地面をたたいた時に音は変わるのかどうかを検証したそうです。

 結果は、すごくホームズの耳は良かったみたいだ、という事らしいですが。

 確かにホームズは感覚が鋭敏なことがよく描写されています。

 あと、銀行のナポレオン金貨の情報の流出や犯人一味だけでトンネルを掘ることは難しそうなことから、この事件の裏ではモリアーティ教授が糸を引いているとする説もあるそうです。

 その発想はなかったので、ちょっと感動してしまいました(ホームズの宿敵のくせにモリアーティの出番が少なすぎるんだよ!)。

 そう考えるとなかなか奥深くて、まだ読み足りていないと感じさせられますね。

 

 

この次の話は、結婚式の直前で花婿が消えた!? 『花婿失踪事件』です。

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